セーヌ川は、パリの象徴として、古くから芸術や文化に深い影響を与えてきました。
しかし、その美しい景観とは裏腹に、水質汚染が長年問題視されています。
2024年にはパリ五輪・パラリンピックの開催が予定され、マラソンスイミングやトライアスロンなどの競技がセーヌ川で行われました。
しかし、「セーヌ川の水質は本当に競技に適しているのか」という疑問の声は根強く、実際に、協議に参加したアスリートの多くが競技後に嘔吐するなど、その水質は国際的な注目を集めています。
本記事では、セーヌ川の水質汚染の原因を深掘りするとともに、具体的な水質データや他の都市の河川との比較を交えながら、その深刻度について解説していきます。
パリ五輪に向けたセーヌ川水質改善
パリ市は、五輪開催を契機にセーヌ川の水質改善を目標に掲げ、大規模な浄化プロジェクトを推進してきました。
下水処理施設の改修や、河川敷の清掃活動の強化など、様々な対策が講じられています。
実際に、近年では水質改善の兆しも見られ、特定の指標においては基準値をクリアしつつあります。
しかし、依然として問題は山積みであり、根本的な解決には至っていません。
セーヌ川が汚い理由はなぜ?水質汚染の原因
セーヌ川の水質汚染は、下記のように複数の要因が複雑に絡み合い、深刻化しています。
理由①生活排水
パリ市内には、老朽化した下水道が多く、雨水と生活排水が混ざり合ってセーヌ川に流れ込む合流式下水道が未だに多く残っています。
そのため、大雨の際には、未処理の生活排水が大量にセーヌ川に流れ込み、水質悪化を引き起こす要因となっています。
理由②工業排水
パリの上流には、工場地帯が広がっており、そこから排出される工業排水がセーヌ川に流れ込んでいます。
適切な処理が行われずに排出される化学物質や重金属は、水質汚染の原因となるだけでなく、生態系にも深刻な影響を与えています。
理由③農業排水
セーヌ川流域では、農業も盛んに行われており、農薬や化学肥料が雨水に溶け込んでセーヌ川に流れ込むことで、水質汚染の一因となっています。
特に、窒素やリンなどの栄養塩類は、富栄養化を引き起こし、藻類の異常発生や酸素不足による魚類の死滅などの問題を引き起こします。
理由④観光客の影響
パリは世界的な観光都市であり、年間を通して多くの観光客が訪れます。
観光客の増加に伴い、ゴミの増加や、セーヌ川での遊覧船の運航による水質汚染も懸念されています。
セーヌ川の水質はどれくらい酷い?
セーヌ川の水質は、BOD(生物化学的酸素要求量)やCOD(化学的酸素要求量)といった指標を用いて評価されます。
パリ市が公表しているデータによると、セーヌ川のBOD値は近年改善傾向にありますが、依然として環境基準を上回っている地点も存在します。
特に、大雨の後や夏季には、水温上昇も相まって水質が悪化する傾向が見られます。
また、大腸菌群数などの細菌学的指標についても、基準値を超える地点が確認されており、遊泳には適さない水質であると言わざるを得ません。
セーヌ川の水質を世界の河川と比較
では、セーヌ川の水質は、世界の他の都市の河川と比較して、どの程度のレベルなのでしょうか。
例えば、ロンドンを流れるテムズ川は、かつて「死の川」と呼ばれるほど水質汚染が深刻でしたが、近年では大規模な浄化プロジェクトにより水質が大幅に改善され、現在では鮭が遡上するまでに回復しています。
一方、インドのガンジス川は、宗教的な意味合いから沐浴や洗濯に利用される一方で、生活排水や工業排水が流れ込み、世界で最も汚染された河川の1つとされています。
セーヌ川の水質は、テムズ川のように劇的な改善は見られないものの、ガンジス川のような深刻な状況にはありません。
しかし、五輪開催都市として、また世界的な観光都市として、さらなる水質改善が求められています。
まとめ:セーヌ川汚いのはなぜ?原因と水質どれだけひどいか比較
パリ五輪でセーヌ川を競技会場として使用するためには、水質のさらなる改善が不可欠でした。
そのためには、下水道整備などのインフラ整備を進めるとともに、市民が環境問題への意識を高め、生活排水対策などに取り組んでいくことが重要となります。
セーヌ川は長年の汚染や都市化の影響を受けており、その改善には大規模な取り組みが求められます。
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